私が考える西洋医学と東洋医学の病気のみかたについて少しお話しします。

現代日本においては西洋医学が主流で東洋医学は傍流だと思います。
両医学とも同じ病気や病人をみていますが、その捉え方が違っています。

kazuma04西洋医学的に病をみる場合、物質的な裏付けを調べるための診察を行い、その結果から診断を導き出します。物質的な裏付けがあるからこそ、決まった治療法があり、病気の治癒率や病気の経過が分かるといえます。
反対にいうと病気の物質的な原因が分からない場合や原因が分かってもそれに対処する方法がない場合、西洋医学的な治療はできなくなります。これが西洋医学的診断から「この病気は治りません」と言われる内容です。本当は「西洋医学的にみれば、この病気を治す方法はありません」という意味となります。

これに比べて東洋医学的な病気のとらえ方は、人体を形作り活動させている気・血・水、その中で特に気の流れが細部に至るまで、体のすみずみに偏りなく流れ、行き渡っているかを最も重視します。
その結果として体の冷えや熱、気が少ないところ、余分な気が多い所、というように体のバランスの崩れをみていきます。物質的な原因を求めていないため、特に重症度が高い病気には「治るかどうかは治療してみないと分かりません」と少し頼りないところがある反面、「東洋医学的にはこの病気は治りません」ということもないのです。
全ての病気は治る可能性、つまり皆さん自身の中に病気を治す可能性を秘めているのです。

これは根本的な人体のとらえ方(これを整体観といいます)の違いといえます。
西洋医学は基本的に人体を物質として固定したものと捉えます。それに対して東洋医学は人体を有機体として絶えず動いているもの、固定していないものとして捉えています。
例えば血液検査などの西洋医学的検査では異常がなくても体の調子は悪い場合があります。反対に血液検査などに多少の異常があっても体の調子は良い場合もあります。
また「西洋医学的治療では、あなたの病気はもう治りません」と言われても東洋医学的治療を受けて治ったという例もあります。

私は決して「東洋医学は優れていて西洋医学は劣っている」と言いたいのではありません。西洋医学の治療の方が命を救う場合も多々あります。それぞれの医学には特徴があり、お互いに補い合っていく方が良い、と私は考えます。
ただ、東洋医学には皆さんが思われている以上に「皆さんの病を治す力がある」、言い換えれば「皆さんには皆さんが思っている以上に病を治す力があり、東洋医学はその力を引き出す能力がある」ということを知っていただきたいと思います。

そしてもう一つ。
東洋医学的鍼灸治療を行う治療者として考えることがあります。
これまで話してきたことを踏まえると、本来の東洋医学は「この患者さんの体の気は今、どのように動いているのかを的確にとらえて、必要なところへ必要な処置を行うものである」と考えます。ここでいう気とは単なるエネルギーだけでなく、外界の気候や環境、人間関係、そして患者さんの気持ちも含めたものです。
私は20数年間、ずっと気をとらえること(東洋医学的診察)、その気の状態に対する治療法を考え、携わってきました。今では約80種類の鍼や灸の道具(鍼の太さや長さの違いも含む)や方法を用いて、一人一人の患者さんに合う治療法を行っています。もちろん今後もより高い技術や知識、そして人格を磨いて治療を高めていく所存です。

【具体的な病気のみかたの違いについて】

それでは少し具体的な病気に対する西洋医学と東洋医学の違いについてご説明します。
ここでは喘息を例にあげてみます。
喘息は気管支喘息といわれるもので、その症状は息苦しさや咳込みなどにより呼吸困難を生じる病気です。ひどくなると死をも引き起こす病です。

kazuma01西洋医学ではまず気管支内側の粘膜のアレルギー性炎症を起こします。それがむくみを生じ気道を狭くします。加えて痰などが詰まった状態とみます。そこに気管支を取り囲む筋肉がけいれんするように収縮することで喘息発作を引き起こします。原因は過労、ストレス、風邪、アレルギー原因との接触、天候、ペット、タバコの煙、冷気、強い臭い、飲酒、月経などさまざまあります。治療は薬物治療が中心となります。予防的治療としてステロイド剤(抗炎症剤:予防的治療)や気管支拡張剤、重症度によっては免疫抑制剤を用います。

東洋医学では患者さんの体の気の状態はどうなっているのかを診察します。どの部分にどれだけ気が少ないのか、不必要な気や血、水(これを邪といいます)があるのか、を知るわけです。また異常な気の状態を引き起こしている原因を調べます。この患者さんは寒さや湿気など気候が原因なのか、患者さんの粘膜が弱いのか、人間関係のストレスによる気持ちが原因なのか、をみていきます。これは同じ喘息でも原因が違えば病のメカニズムも異なり、その治療法も一つではないと考えるためです。

治療はまず症状の直接原因に対する処置を行います。寒さや湿気が原因ならば気、特に体を温める気が減少したり気の流れが悪くなっているので寒さや湿気を取り除く鍼や灸を行います。人間関係のストレスによる気持ちが原因ならば、体や心が過緊張を起こして気が滞り、気が多い所少ない所が生じます。そこで過緊張を緩め、リラックスするような鍼や灸を行います。そして症状が安定したら一般的にいわれる体質改善の処置を行います。寒さや湿気が原因ならば患者さん自身で体を温かくできるよう、水の流れが良くなるような鍼や灸を行います。またストレスによる気持ちが原因ならば多少のストレスがあっても気の流れが悪くならない体になるための鍼や灸を行っていきます。

このように同じ病でも西洋医学と東洋医学は体のみかたが異なり、それにともなって治療法も異なってくるのです。

LINEで送る